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株式会社ジーシー創業95周年記念・GC友の会60周年記念 第4回 国際歯科シンポジウム

45年の臨床経験から得られたものと最新のエビデンス

古谷野 潔 先生(コーディネーター)
Sreenivas KOKA 先生・小宮山彌太郎 先生・山﨑長郎 先生

最初に、コーディネーターの古谷野 潔先生がイントロダクションとして、補綴分野にパラダイムシフトをもたらした接着とオッセオインテグレーションについての変遷を解説された。パラダイムシフトとともに適応症も広がってきたが、偶発症や多くの問題を抱える症例があることにも触れ、インプラント治療のリスクファクターについても語られた。とくに、超高齢社会に突入した日本では平均寿命と健康寿命のギャップがあるため、患者さんの全身的なリスクも考慮してインプラント治療を考えていく必要があると述べられた。

Sreenivas KOKA先生は、医学的・歯学的考察から「長期インプラント治療成功のための患者評価」と題し、講演された。
米国Mayo Clinicでの臨床経験、患者データ分析から糖尿病、骨粗鬆症、放射線治療、ビスフォスフォネート治療、喫煙という5つのトピックからインプラント治療での問題点およびプロトコールを紹介。また、インプラント治療を成功に導くには「患者」「臨床医」「フィクスチャー」の3要素があり、患者の因子を把握し、術者が必要な経験と知識、スキルを正しく持つこと、さらにリスクの少ないフィクスチャーの選択で、インプラント治療の長期安定が期待できると解説された。
例えば、喫煙者はインプラントの生存に影響があり、インプラントを失うリスクが非喫煙者の2.6倍高い。しかし、初期固定が正しく得られれば、その後はとくに問題がないと語られた。ただ、インプラント体の長さと表面性状には留意する必要があり、とくに表面性状は粗面だと5年生存率は96%、スムースな機械仕上げでは86%になるというデータを提示。長さも短いとリスクが高くなるので、患者さんに適切なフィクスチャーを選択することが重要だと講演された。
結論として、インプラント治療のためにはサイエンス、プロトコール、患者因子、知識、スキル、そして必要な経験を積んでいることが大切だと強調された。


小宮山彌太郎先生は「過去から学ぶ」と題され、45年の臨床経験からご自分がインプラント治療を受けるとしたら、どのようなフィクスチャーや固定方法を選ぶのかなどを解説された。
そのなかで、インプラント療法で最も大切なのはオッセオインテグレーションしているフィクスチャーだということを再認識するべきだと強調。フィクスチャー以外のコンポーネントは損傷しても交換できるが、フィクスチャーの損傷は致命的だと語られた。そのため、もし何かトラブルが起きた時にはフィクスチャーが損傷するリスクがあるジルコニア製のアバットメントは、上部構造に使いたいとは思わないと述べられた。さらに、どのようなフィクスチャーを選択するかでは、エクスターナルのコネクションには安全装置として意図的に弱い部分が作られているため、個人的にはエクスターナルのものを選びたいと解説された。また、固定方法ついては改変が可能なスクリューリテインを選択したいと過去の経験から述べられた。
インプラント周囲炎については、バクテリアにより起こるが、その前に患者さんの病態や生活習慣など、何かきっかけがあるはずだと語られた。フィクスチャーの表面性状についても粗面の場合には、条件によっては不利に働くケースもあるため、診断や治療計画を立てる際には、患者さんの骨の状態や生活習慣などを十分に考慮してフィクスチャーの表面性状を選択することも必要だと述べられた。
最後に、インプラントも含めてどんな工業製品でも寿命があり、生体の寿命にも限りがあると指摘。患者さんにとって好ましい状態を最期まで提供するには、容易に修理や改変が可能なものを採用するべきだとまとめられた。
そして、次世代の歯科医療人は、適切な教育と訓練を積んだうえで、先達の経験や失敗を踏み台に未来に進んでいって欲しいと語られた。

山﨑長郎先生は「複雑な補綴のマネージメント」との演題で、どのようなマテリアルを使って21世紀の補綴を成し遂げていくかということを、2004年に発表した審美修復のクラスフィケーションにそって解説された。
今日では、患者さんはさまざまな分野から情報や知識を得て、従来よりもさらに高いレベルの審美性を修復治療に望むようになっている。それに対応するためには、審美修復治療の臨床的基準を確立する必要があると同時に、症例が複雑になればなるほど各ステップで、矯正・歯周・インプラントなど各分野との連携が必要になると語られた。さらに、マテリアルとシステムは日進月歩で、いまはデジタルの知識も必須となってきているとした。

フレームワークが無く補綴だけで終わる症例については、MIに則ったポーセレンラミネートベニアで対応したいと語られ、接着理論がわかっていれば適応症も広がると解説された。そのなかで、プレス系のマテリアルは耐酸性が弱かったが、LiSiプレスになり耐酸性もよくなったので使い勝手が広がったと評価された。
また、ジルコニアも年々進化しフルカントゥアの時代となってきたが、すべてデジタルに頼るわけではないと強調。補綴物の一番の問題はオクルージョンとマイクロリーケージなので、矯正とインプラントの絡ませ方や、マイクロスコープによる精密な形成は欠かせないと語られた。

最後に、マテリアルやシステムの進化が激しいなかで、すぐに新しいものに飛びつくのではなく、少し間を置き、マテリアルならすべてのデータを比較・検討し、それまでの術式と上手く組み合わせて次のステップに進むことが大切だと強調された。

3名の先生方に共通していたのは、補綴分野の進歩に対して歯科医療従事者は対応できているのだろうかということだった。とくにインプラント補綴治療で、さまざまな問題を抱える症例が多いということから、今一度、インプラントのリスクファクターを見つめなおす姿勢が大切だと先生方は語られた。
講演された先生方の長年に渡る臨床経験から得られた知見を、インプラントをはじめとする最新の補綴治療の羅針盤にしていただきたいと古谷野 潔先生はまとめられた。


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  1. 第4回国際歯科シンポジウム
  2. SESSION11 45年の臨床経験から得られたものと最新のエビデンス