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株式会社ジーシー創業95周年記念・GC友の会60周年記念 第4回 国際歯科シンポジウム

現代の世界基準
低侵襲治療の新理論とテクニック

宮崎真至 先生(コーディネーター)
Javier TAPIA GUADIX 先生・Gianfranco POLITANO 先生・南 昌宏 先生

冒頭にコーディネーターである宮崎真至先生が登壇し、イントロダクションを行った。接着技術やコンポジットレジンなどの材料の進化による歯科治療の変遷を紹介し、こうした進歩により低侵襲で審美的なワンデイ・トリートメントが可能になったと講演された。次いで3名の先生方が講演された。

Javier TAPIA GUADIX先生は「Emulation of Anterior Teeth Aging with Composite Resin : Challenges and Feasibility」の演題で、前歯部のコンポジットレジン修復でより審美性を実現するテクニックを解説された。
その前提として、歯を模倣するためには歯の色を構成する色相・彩度・明度を天然歯構造に基づいて理解する必要があると強調された。 色相と彩度はシェード選択で行えるが、難しいのは明度で材料に透明性を加えるだけでなく、研磨による表面性状でも明度を変えることができると語られた。さらに、加齢によるエナメル質の表面性状の変化も提示され、若いエナメル質では有機物が多いので光を拡散し透明性が低いこと、成熟したエナメル質は有機物が少なく透明性が高くなるので拡散も少なく彩度が高くなることを紹介された。これら歯の色の特徴を理解したうえで材料選択を行いThe Penta Laminar(5層)テクニックを用いて、より天然歯に近い歯を模倣できると語られた。
The Penta Laminar(5層)のコンセプトは歯牙構造に対応したもので、彩度の低い「象牙質内側」、彩度が高くなる「象牙質外側」、コラーゲンが多く屈折率の低い「デンチン・エナメルジャンクション(DEJ)」、エナメル小柱により光が散乱する「エナメル質内側」、そして散乱が少なく透明性の高い「エナメル質外側」という歯牙構造を模倣するというもの。この基本をおさえたうえで、ワンデイ・トリートメントでコンポジットレジン修復を行うが、すべてが5層である必要はなく修復状態に応じて、よりシンプルな2層、あるいは3層テクニックでも天然歯を模倣できることを披露された。
最後に、より自然な状態に修復するためには患者さんの年齢を考えた材料選択が必要であり、研磨による表面性状の与え方がポイントになると強調された。


Gianfranco POLITANO先生は「Let Nature be Your GUIDE ; The Tri Laminar Technique」との演題で、臼歯部でのダイレクトボンディングについて講演された。
最初に、天然歯の組織解剖学的な原則に従って修復する必要を述べられ、解剖を知ることで正しい咬頭のサイズや比率、サルカスの傾きなどを決められると解説された。そして、臼歯部修復で一番大切なのは力学的な問題なので、正常な組織はしっかり残す窩洞形成が最も重要だと述べられた。これらを理解したうえで、天然歯の組織解剖モデルである3層を模倣して修復していく3層テクニックを披露された。
3層テクニックは、「象牙質」と「エナメル質」とその接合部の「DEJ」の3層を考慮して行うもので、解剖学的構造では象牙質はつねに凹の状態、エナメル質は完全な凸の状態になっているとし、3層テクニックはその歯牙構造を模倣するものだと解説された。また、このテクニックでも失われた歯質だけを修復することで、2種類あるいは1種類のコンポジットだけで修復ができると臨床ケースを披露され、象牙質やエナメル質の構造を理解することで積層も容易になりワンデイ・トリートメントで修復できると講演された。

最後に、南 昌宏先生が「チェアサイドCAD/CAMを応用したダイレクトボンディング」と題した講演をされ、多くの症例を供覧された。
なかでも、前歯エロージョンのケースや正中離開のケース、さらには矮小歯の延長線上に4本の歯がある前歯形態の修正に、CAD/CAM用のセラスマートなどのレジンブロックでパーシャルベニアを作り、セットしたMI症例を紹介。その際、色調で注意するのは透明度と光の反射で、より天然歯に近づけるためにも研磨が重要だと解説された。また、研磨はハイポリッシュで回転方向が常にレジンから歯に回転させると、ベニアの接着面と歯が非常にスムースな仕上がりになると語られた。
さらに、保険導入されたCAD/CAMクラウンについて、多くの先生方から外れやすいという意見もあるが、弱圧で内面をサンドブラストしてコンポジットレジンで圧接して装着することで、嵌合力も期待できて安心だと解説。そして、ポリマーブロックを活用する利点として追加充填が行えることとし、ある程度の咬合力にも対応できるので、適応症も広がるのではないかと講演された。

講演された3名の先生方に共通していたのは、歯の形と歯の色相学を理解すること。そのうえで適切な材料を選択すること。そして、何よりもMIの考え方に則って修復することにより、審美的なワンデイ・トリートメントが行えるということであった。


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  1. 第4回国際歯科シンポジウム
  2. SESSION1 現代の世界基準 低侵襲治療の新理論とテクニック