近年の咬合の考え方では、理想的な咬合の追求についてはやや否定的な面があり、大方の咬合と補綴ができればよい、との意見や、咬合を詰めていっても予後にはかかわらない、といった論さえ出ているようです。また、教育の現場においても、昔ほど咬合の重要性は教えられなくなったように聞いています。一方、インプラントや審美など、いわゆる先進医療が話題の中心となっている今日、補綴臨床において、何が幹か、何が枝葉なのか、取り上げ方によって捉え方の誤解も生じているようです。
我々の臨床の現場においては、様々な状況にある欠損歯列をより良く再建し、維持していくための、臨床的な咬合が整理される必要があるように思います。それには、咬合が言葉の論議に終わることなく、様々な症例に長期に携わり、経年的に対応を重ねていくことから得られると考えています。一臨床家が、治療体験を通してどこまで咬合が掴めたかわかりませんが、よりよい臨床咬合を再建維持するうえで、今回の話題が参考になれば幸いです。