保存治療や歯内療法は歯科治療のベースであり、日々の臨床の中でかかわらない日が無いといっても過言ではありません。そのスキルアップのためには、EBM・臨床疫学というマクロへの視点と、分子(生物学・材料学)というミクロへの視点が欠かせません。
しかし、ミクロを追究するあまり、個体としての人間の姿を見失ってしまったり、マクロを追究するあまり、一人一人の人間が見えなくなってしまったりしないようにしなければなりません。患者はあくまでも「個人」であり、個別性を把握し、対応していく必要があります。
最近の医療は「正常」と「異常」の境界が不明確化し、そのために治療の選択肢は増え、選択することへの責任が増大しています。ミクロとマクロの視点をバランスよく取り入れながら個別的に治療目標を選択し、目標を患者と共有したうえで柔軟に対応していくことが、考える歯科治療の実践につながっていくのではないでしょうか。