歯科治療において患者の要求はさまざまである。審美的要求の高い患者もいれば機能的な不具合を訴える患者もいる。我々の仕事はその要求に応えることにあるが、時として患者の病態を見過ごす、若しくは見誤ってしまう場合がある。
欠損補綴においてもその欠損部分のみを診て治療を行い、結果として患者の健康を増悪させてしまう危険性がある。いわゆる“木を見て森を見ず”という状態である。特にインプラント治療においてこのようなトラブルが増加していることも事実である。
歯科治療はバランスが大切であることは言うまでもない。患者の口腔内を一口腔単位で考えなければならないだけでなく、個々の生体において調和をはかりながら機能性・審美性・恒常性を追求する必要がある。
そこで今回は、患者の病態を紐解きながら、機能、咬合を考えた審美欠損補綴のあり方について症例を提示しながらお話ししてみたい。