8昭和大学歯学部歯科保存学講座保存修復学部門歯科医師 歯科医師新妻由衣子 小林幹宏 2022年にComputer Aided Design/Computer Aided Manufacturing(CAD/CAM)インレーが保険収載され、2024年4月からは口腔内スキャナー(以下IOS)による光学印象が保険適応となった。以前は、印象材を用いた従来の印象方法と比較するとIOSによる光学印象は精度が低く、CAD/CAMシステムを用いたインレーは窩洞適合性も劣るとされていた。しかし、現在ではCAD/CAMシステムは急速に発展し1)、従来の印象方法や他の方法で製作したインレーと精度は変わらないと報告されており2) 、CAD/CAMシステムを用いたインレー修復は臨床において広く普及している。IOSによる光学印象が保険導入されたことにより、今後ますます増加していくと期待されている。CAD/CAMシステムを用いたインレー修復に用いられる材料には、コンポジットレジン、ガラスセラミックス、ジルコニアがある。その中でもガラスセラミックスは透光性が高く審美性セラミックインレー修復に用いられる二ケイ酸リチウム系のCAD/CAMブロックは、切削性を高めるため一般的には部分焼結された状態で提供される。しかし、CAD/CAMセラミックインレー修復において、結晶化処理の工程がインレーの窩洞適合性に与える影響は明らかにされていない。そこで、二ケイ酸リチウム系とメタケイ酸リチウム系のガラスセラミックスブロックについに優れ、高強度であるため臼歯部のインレーやアンレーなどの症例において非常に多く用いられている。ガラスセラミックスには、二ケイ酸リチウム系、メタケイ酸リチウム系があるが、両者ともミリング後に結晶化処理(焼成)が必要なものと不要なものに分けられる。前者は、ブロックとして提供される状態では部分的に結晶化されていて、インレー体をミリングし焼成することで完全に結晶化する。結晶化処理には寸法変化が伴うため、ミリング、焼成のプロセスはその収縮を考慮しプログラムされている。一方、イニシャル LiSiブロックは二ケイ酸リチウムを主結晶としたブロックであるが、ミリング後の結晶化処理は必要ない。完全に結晶化された状態で提供されるため、ミリング後は研磨のみでインレー体が完成する。そのため治療時間を大幅に短縮することができ、ファーネスを所有していない歯科医院であってもOne Visit Treatmentが可能となる。て、ミリング後に結晶化処理が必要なものと不要なものを用いて辺縁適合性と内部適合性を評価した(図1)3)。結果として、結晶化処理の有無により内部適合性に有意な差は見られなかったものの、咬合面と歯頸部の辺縁適合性には有意な差が認められた。結晶化処理が不要な二ケイ酸リチウムブロックはインレーの辺縁適合性に優れていた(表1)。Ⅰ.CAD/CAMシステムを用いたインレー修復の現状Ⅱ. 結晶化(焼成)工程がセラミックインレーの窩洞適合性に与える影響についてイニシャル LiSiブロックによるインレー修復の窩洞適合性−結晶化(焼成)不要・微細結晶構造の優位性−
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