ebook20240601
34/40

3434図4各々共変量に対する累積成功率のKaplan-Meier曲線とLong-rank検定による有意差比較の結果(有意水準p<0.05)左上:上顎対下顎、右上:第一大臼歯対第二・第三大臼歯、左下:最後方臼歯対非最後方臼歯、右下:生活歯対失活歯生活歯対失活歯で成功率に有意差は見られたものの、クラウンの装着部位による有意差は見られなかった。図5大臼歯適用に関する後ろ向きコホート研究におけるKaplan-Meier曲線と3年までの成功率 すべての症例(左)と接着性レジンセメントを使用した症例(右)の比較また、我々は材料技術の発展の結果として、合併症を低減し成功率を上げる余地があると考察している。CAD/CAM冠として大臼歯に適用する機能区分(Ⅲ)として開発されたブロックのみを使用した症例のみを抽出して解析した結果、1〜3年後の成功率は有意に改善した。大臼歯適用の材料開発において更なる技術革新が得られた結果と考えられ、現在我々は同材料を接着性レジンセメントと組み合わせて前向き研究による検証を進めている。2004年にPeter Owen教授がInternational Journal of Prosthodontics誌のEditorialで言及したメタルフリー修復における”Appropriatech”4)とは、生体機能や補綴治療の原理・原則を犠牲にすることなく、費用対効果の高い治療を提供するための適切な技術である。メタルフリー治療は、経済的に恵まれた人だけのものであってはならず、まさにSDGsで誓われている「誰一人取り残さない(leave no one behind)」に繋げられるものである。もちろん、セラミックやジルコニアは非常に優れているが、コストが高い。一方でCAD/CAM冠は、補綴治療の最低限の原理・原則を満たしながらリーズナブルな価格で提供できる。つまり、CAD/CAM冠は、費用対効果のバランスという観点から見ても、広く受け入れられうる治療法と言えるであろう。このような概念がインクルーシブ(すべてを包括する)社会に向けた世界的な口腔健康の向上をサポートにつながることを期待したい。 (図7)また、その他の層別解析により、クラウンが装着された部位は成功率に影響を与えない(リスクファクターでない)ことが見出だされた。(図4)CAD/CAM冠は第二大臼歯を含むいずれの臼歯にも同様に適用可能であろうと考察された。また、診療指針に従い接着性レジンセメントを使用した症例のみを抽出した場合1年後の成功率は88.7%、3年後の成功率は69%であった。(図5)これにより、CAD/CAM冠に適切に対応して接着性レジンセメントを使用することの重要性が示唆された。3.メタルフリー修復における“Appropriatech”とは

元のページ  ../index.html#34

このブックを見る