ebook20240601
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2929るエンドクラウンは従来型CAD/CAM冠よりも強度を確保しやすく,たわみによる接着界面の破壊も起こりにくいと考えられる.in vitroの研究では二ケイ酸リチウムガラスのエンドクラウンとCAD/CAM用レジンブロックのエンドクラウンの破壊抵抗性は同等であるという報告もされている4).エンドクラウンの装着では,デュアルキュア型セメントもしくは光重合型セメントを使用する場合,補綴装置自体の厚みにより照射光がセメント層に到達するまでに減弱してしまうため,従来型CAD/CAM冠よりも光照射による重合が不十分になりやすい7).そのため,化学重合に優れたセメントを選択することが望ましい.ジーセムONEと接着強化プライマーによる接着システムは,歯質とレジンセメントの接着界面にタッチキュアによる強固な接着が得られるため,光の届きにくいエンドクラウンの装着に適している可能性がある.また,セラスマートシリーズはエンドクラウンの様々な臨床研究にも使用されており,なかでもセラスマート300はnmオーダーのナノフィラーとFSCテクノロジーを採用することにより優れた強度,耐摩耗性を実現している.このようなエンドクラウンに適した接着システムを持つセメントや優れた物性を有する材料を選択することがエンドクラウン修復における成功のポイントであると考える.失活臼歯の歯冠修復では咬頭を被覆するような補綴装置を選択することが望ましいとされていることから8, 9),これまでの保険診療では健全歯質が多く残る失活臼歯でも全部被覆冠を選択するケースが多かったのではないかと思われる.今回の診療報酬改定でエンドクラウンが保険収載されたことで,歯頸部付近の健全歯質を残したまま咬頭を被覆できる低侵襲な歯冠補綴が保険診療でも可能となった.エンドクラウンの5年生存率に関するシステマティックレビューでは,大臼歯や小臼歯において従来型クラウンと比較して統計的な有意差は認められず,従来型クラウンと遜色のない臨床成績が報告されている5).今後CAD/CAM用レジンブロックを使用したエンドクラウンは歯冠補綴の有効な選択肢のひとつとなるだろう.詳しくは『デンタルダイヤモンド』2023年9月号にも掲載している10).今後の臨床の参考になれば幸いである.2) 公益社団法人日本補綴歯科学会:保険診療における CAD/CAM冠の診療指針 2024.

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