⃝セルフケア:患者さん自身がう蝕のコントロールのためにとる行動⃝プロフェッショナルケア:歯科医院で患者さんに行う指導や処置図1 う蝕のプロセス(伊藤 2020より)脱灰再石灰化う蝕=プロセスう窩=結果多くの歯科医師は,毎日のようにう窩を削って修復治療を行っている.しかし,削って詰める治療でう蝕は治っているのだろうか?答えはNo.削って詰めることはう窩(cavity)の治療にはなっても,う蝕(caries)の治療にはなっていない.まず,う蝕とう窩について説明しておきたい.飲食に伴って口腔内では,歯面と付着したバイオフィルム液相との間で,脱灰と再石灰化が絶えず繰り返されている.その中で,脱灰している時間が再石灰化を上回るとう蝕が進行する.つまり,う蝕とは脱灰と再石灰化の間を揺れ動くプロセス(過程)と言える.やがて,そのプロセスの結果が目に見える形として現れたものがう窩である(図1).われわれが削って詰めているのはう蝕の治療ではなく,う窩の治療である.う窩にいくら素晴らしい修復治療を行っても,う蝕の原因に対処しなければ,修復治療が終わった瞬間から新しいう蝕のプロセスがスタートし,数年かけてう窩は再発してしまう.そうならないためには,う蝕をコントロールするための「削らない治療」が必要である.削らない治療の柱は次の2つ.削らない治療では,患者さんのう蝕リスクを正確に診断し,適切な知識を伝えて,患者さん自身がう蝕のコントロールに効果的な行動を日常的にとれるよう手助けすることが,成功の鍵となる.削る治療には歯科医師の知識や技術が必要だが,削らない治療には歯科医師と歯科衛生士のカリオロジーの知識が不可欠である.4う窩の治療・う蝕の治療
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