森い井3おおもりいしひろし菌的環境下で治療を行えば,成功の可能性はずっと高くなります.根管治療を成功させるために必要なのは高度なテクニックや高価な材料ではなく,無菌的な環境や適切な症例の見極めだと思います.本冊子は,歯内療法のなかでも術者を悩ませることの多い再根管治療をテーマにしていますが,感染根管に行う再治療では無菌的な環境や適切な症例の見極めはいっそう重要になります.政府統計の総合窓口(e-Stat)に掲載されている社会医療診療行為別統計の最新(2020年)のデータによると,抜髄452,086件に対し,感染根管処置は536,125件と,感染根管処置のほうが84,039件も多いことが示されています 1).この傾向は長年変わっておらず,わが国の歯内療法における問題点として,抜髄処置の成功率が低く再治療に移行するケースが多いということ,そして一般歯科で毎日のように難易度の高い再根管治療を行わなくてはならないということが挙げられるでしょう.そのような状況を打開するには,歯内療法の基本を踏まえ,治療の成功に結びつくような判断と対応を行って,根尖性歯周炎を抱える多くの患者さんの問題を解決していくことが大切です.ここではテクニックについては成書に譲り,再根管治療の介入時に考慮すべきさまざまな事項や,症例の難易度の判定方法とその対応を解説していきます.先生方が再根管治療を行う際の一助にしていただければ幸いです.【執筆】 大2006 年 昭和大学歯学部卒業2010 年 昭和大学大学院歯科補綴学講座修了(歯学博士), 2012 年 代官山デンタルサロン(東京都渋谷区)開設2018 年 代官山デンタルサロンエンドオフィス(東京都渋谷区)開設【監修】 石1993 年 神奈川歯科大学卒業1996 年 東京都板橋区にて一般歯科医院開設2006 年 ペンシルバニア大学歯学部歯内療法学科大学院卒業2007 年 石井歯科医院(東京都港区)開設2018 年 東京都中央区に移転日本歯内療法学会会員American Association of Endodontists 会員ペンシルバニア大学歯学部歯内療法学科非常勤講師Penn Endo Study Club in Japan 主宰石井歯内療法研修会主宰日本歯内療法学会専門医American Association of Endodontists スペシャリストメンバー昭和大学歯科病院勤務さゆり 宏
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