【体験版】成功と失敗をわける 再根管治療における“選択”のポイント
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2私がまだ歯科医師になって間もない頃,一般歯科医として毎日のように抜髄や感染根管処置を行っていました.当時,処置をするたびに,痛みがなくなればいいな,治ってくれますように,と祈るような気持ちで治療を行っていたことを思い出します.その頃は,治療が失敗に終わっても理由がよくわからないまま,痛みを訴えてくる患者さんと向き合わなくてはならず,根管治療が嫌でした.歯内療法専門医となった今,どうして昔は失敗が多かったのかと振り返ってみると,当時の私には,①治療環境の整備不足,②歯内療法の知識不足,③症例選択の誤り,という3つの問題点がありました.①についてですが,当時,私は抜髄や感染根管処置を,拡大鏡などを使用せず見えないなかで手探りの状態で行っていました.唾液や出血が根管内に侵入してくるような環境で治療を行っていたため,根管を見つけられず穿孔したり,組織を取り残してしまったり,必要以上に歯質を削除するような処置を繰り返していました.②について,当時の私は歯内療法に関する知識が足りず,根尖性歯周炎の原因が細菌であることを意識せずラバーダム防湿や無菌的処置を疎かにして,上手に根管を形成して充塡するというテクニックばかりに意識が向いていました.戦うべき細菌という相手を見ずに一人でシャドーボクシングをしていたようなものでした.③については,適切な診査・診断を行っておらず,症例の難易度が評価できないまま治療介入していました.当然ですが,難易度の高い症例では失敗し,理由もわからないまま治療を繰り返していたため,患者さんの問題を解決できていないのに補綴に進む,または抜歯となることが多くありました.このように,以前の私の歯内療法の失敗は自らに原因があり,起こるべくして起きていたということがおわかりいただけるかと思います.これを踏まえて,根管治療に苦手意識をお持ちの先生や,なかなか治療が成功しないと感じている先生方にお伝えしたいのは,私が挙げた3つの問題点をご自身の診療にぜひともフィードバックしていただきたいということです.これら3つの問題点を,根管治療を成功に導くための3つのポイントとして置き換えると,①拡大鏡の使用やラバーダム防湿により視野を確保して治療を行う,②細菌の除去と細菌の侵入を防ぐためのラバーダム防湿と無菌的器具操作を徹底する,③適正な診査・診断と治療法選択を行う,という3項目に集約されます.もちろん歯内療法のテクニックはある程度必要ですが,上手な根管形成や根管充塡,材料が病気を治すわけではありません.治療の成功を大きく左右するのは正しい診査・診断,治療法選択と無菌的環境下での治療です. 正しい診査・診断は経験や専門的な知識が必要となる場合も多く,なかなか習得するのは難しいかもしれませんが,無菌的な環境を整えるのはすぐにでも始められます.また,診査・診断で迷う場合は,歯内療法専門医に診査・診断を依頼し,そのうえで自らが行えそうな症例であれば無はじめに 

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