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SESSION 24

まるごとセラミックワーク

荒木 康成 先生(DT)・BANG, Min Guk 先生(DT)
KANG, Chien-Ming 先生(DT)・MARAIS, Bill Dereck 先生(DT)
ROOZEN, Stefan 先生(DT)・関 克哉 先生(DT)

 荒木康成先生は「天然歯構造から考察するイニシャルZr-FSによる色調再現のヒント」というタイトルで、ジルコニアフレームにおける色調再現のポイントをテーマに講演。前歯の修復物を天然歯のように見せるには、ジルコニアフレームにポーセレンで蛍光性を補うことが重要とし、イニシャル Zr-FSを築盛していく実例などを解説された。
 また、色調再現を目指すための要点のひとつとしてシンタリングを挙げられた。ジルコニアの焼成に使用するファーネスにより、同じ条件、同じジルコニアディスクであっても透明性や色調が変わる。グラデーションタイプのジルコニアディスクでは焼成の温度が低いと色調が暗く、透明性が低くなり、温度が高いと色調が明るく、透明性が高くなる、といった実験の結果を挙げ、シンタリングに気を配ることの重要性を語られた。

 BANG, Min Guk先生は「Various Approaches to Labial Cut-Back Facing Technique using GC Initial Ceramic Systems」というタイトルで、ジルコニアによる前歯の修復について語られた。
 前半では模型なしでのフルジルコニアクラウンの製作を紹介。十分な審美性にするためには、透過性と強度を考慮したジルコニアディスクの選択と、細かなステイニングが重要とされた。また、ステイニングに使うラスターペーストは歯のトーンを合わせるのに有効であり、セラミックの細かい粒子が入っているため焼成後にクリアに見えるのが臨床的にも良いと評された。後半ではラビアル・カットバック・フェーシング・テクニックでの修復物の製作を紹介。0.3mm程度のカットバックでも優れた審美修復ができることを、丁寧に解説された。

 KANG, Chien-Ming先生は「Ultimate Spectrum -0.3 mm Thin Layer Technique with Initial Spectrum and LiSi Ceram」というタイトルで、ジルコニアフレームにおける薄いレイヤリングのテクニックを中心に講演。複数の症例を挙げ、実際に使用したイニシャルシステムの陶材やステインの色調を、その選択のポイントとともに、細かく解説された。
 冒頭ではイニシャルのステインシステムであるスペクトラムステインとラスターペーストの汎用性の高さに触れ、この一式があれば、焼成温度の調整だけですべてのマテリアルのステイニングに対応できるとした。また、スペクトラムステインの16色を用途別に4つに分類するという、先生の私見も述べられた。「Bodycolor、Mamelon、Halo effect」「Cervical chroma」「Translucency effect」「Surface Characteristic」の4つに分けて考えることで、わかりやすくステイニングが行えるとされた。

 MARAIS, Bill Dereck先生は「Hybrids & Beyond: GC Products on High Performance Polymers」というタイトルで、高性能ポリマーであるPEKKとジーシー製品を組み合わせた修復物の製作について、複数の症例を披露された。
 PEKKはウェットボンディングができ、適切なプロトコルに則ればマイクロリーケージが起きない、と素材の特長を解説。PEKKのフレームに、イニシャル LiSiプレスによる上部構造、グラディア ガムによる歯肉部を合わせるという方法で、インプラントオーバーデンチャーを製作する手順を具体的に紹介された。この手法により、十分な強度と審美性を有しつつ、素材がうまく接着し漏洩の心配がない、優れた修復物ができることを強調された。

 ROOZEN, Stefan先生は「Aesthetic Possibilities with Lithium Disilicate」というタイトルで、イニシャル LiSiブロックやイニシャル LiSiプレスを活用した審美修復について講演された。
 審美修復においては、バイオミメティックを意識して天然歯の構造をできるだけ再現することが重要として、モノリシック、カットバック、レイヤリングの3つの症例を挙げて、それぞれの手技を紹介。LiSiは天然歯のように表面を光が流れるような見た目が再現でき、自然な蛍光性もオパール効果も持ち合わせているマテリアルであり、これらを活かすことで最小限の労力で大きな効果を得られると語られた。また、新しい陶材とステインであるIQ Lustre Pastes ONE(国内未発売)、IQ ONE SQIN(国内未発売)を用いた修復物表面処理のテクニックも解説された。

 関克哉先生は「GC Initialを用いた審美歯科」というタイトルで、イニシャル LiSiの陶材とイニシャル LiSiプレスを活用した症例をもとに講演された。プレスセラミックスによるインレーやアンレーの製作については、適合を良く仕上げ、調整を少なくできるテクニックを解説。シュアスペーサーを最初にマージンの際まで薄く塗り、それが乾いた後、隅角や角張っている部分に厚めに盛るという方法で適合性をコントロール。加えて、スペーサーが厚くなったぶんを考慮し、埋没材の混水比を変更して仕上がりの大きさをコントロールするという手法により、無調整でもフィットする修復物が製作できるとされた。
 また、2本の中切歯にクラウンでの補綴とラミネートべニアを同時に装着する場合などに、イニシャル LiSiプレスを用いてそれぞれの色調を合わせて製作する手段となる、独自のフュージョンテクニックも披露された。