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SESSION 21

歯の移動・矯正に関するパラダイムシフト
~歯の移動の固定源~

モデレーター・講師:森山 啓司 先生
橋本 幸治 先生・渥美 克幸 先生・不島 健持 先生・CHUNG, Chooryung J. 先生

 モデレーターを森山啓司先生が務められ、矯正歯科治療における固定源をテーマにセッションが組まれた。森山啓司先生は、固定の概念や顎内固定、顎間固定、顎外固定といった分類を解説したのち、第4の固定として骨に固定を求める治療法である歯科矯正用アンカースクリューを紹介し、臨床応用の歴史的変遷やメリット・デメリットについて解説された。また現在、ジーシーオルソリー協力の上、固定源を骨表面に求めた新しい歯科矯正用アンカースクリューの開発に取り組んでいると報告された。

 続いて、橋本幸治先生が歯科矯正用アンカースクリューの活用方法について、MTMを中心に解説された。移動対象歯のみに維持力を負荷することから、術式の簡略化、固定歯の反作用の防止などのメリットを挙げられた。歯科矯正用アンカースクリューの成功率は80〜90%とされており、成功率を高めるための診査・診断、植立、トラブルの対応について言及し、とくに植立部位を確定させる際は、歯根に接触させないことを強調された。

 渥美克幸先生は、一般開業医の立場より、歯科矯正用アンカースクリュー「オルソリーインデュースMS-II」の導入に際して、臨床上のメリットや苦労された点などについて語られた。オルソリーインデュースMS-IIの導入により、補綴治療や歯周組織再生療法などの症例において術式がシンプルになり、それまでは得られなかった部位に固定源が得られることで、不可能な治療ができるようになると述べられた。

 不島健持先生は、歯科矯正用アンカーシステムを分類し、スクリュータイプ、プレートタイプのほか、口蓋に固定源を求めたハイブリッドタイプであるアンカーロックシステムを紹介された。大口蓋動脈や大口蓋神経の走行に注意すれば口蓋への植立が適していると述べられ、手術侵襲が小さく、術式の簡便さなどから、新たな選択肢の一つではないかと展望を語られた。また、大臼歯の遠心移動や埋伏歯の牽引などの適用症例を報告された。

 最後に、CHUNG, Chooryung J.先生が中年期以降の「本当の大人」に向けた矯正治療のあり方について講演された。中年期や高齢期の患者に対して、歯科医師側も患者側も矯正治療に積極的でない場面がみられるが、歯列不正を改善し、審美性を高めることで満足度の高い歯科治療が実現すると強調された。また、歯周治療や補綴治療が必要な場合でも、矯正治療を別枠として捉えるのではなく、最初から選択肢に入れた包括的歯科治療として行っていくことが望ましいと語られた。