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SESSION 14

トッププロソドンティストの流儀
〜進化した技術と臨床活用法〜

大谷 一紀 先生・MARAGLIANO-MUNIZ, Pamela 先生
土屋 賢司 先生・FERRARI, Marco 先生

 大谷一紀先生は、現在、歯科界では多くの分野で治療の低侵襲が叫ばれており、補綴治療も例外ではないとし、これを可能にしたのが近年の接着材料やオールセラミック歯冠修復材料の進化だと説明。以前であれば相反した審美性と侵襲性の両立をも可能にしたことに言及された。講演では、数多くあるジルコニアセラミックスを第一世代、第二世代、そして第三世代と三つに大別して解説され、ジルコニアを材料としたシングルリテーナーのレジン接着ブリッジが、1歯欠損の治療において、低侵襲で、予知性の高い治療オプションとなる症例が明示された。また、前歯一歯欠損の補綴治療オプションとして、この補綴方法は審美性に優れ、従来型の3ユニットブリッジやインプラントよりも侵襲が少ないことが示された。

 MARAGLIANO-MUNIZ,Pamela先生は、前半でう蝕および歯周病のリスクについて概観するとともに、エビデンスに基づいた予防と治療のプロトコルであるGuided Biofilm Therapyの概念について解説し、う蝕や歯周病のリスクに対処するには、歯科衛生士による患者に対する教育の重要性を説いた。そのうえで、修復ばかりにとらわれ、患者の口腔内環境に対処することの必要性をおろそかにしないことの大切さを語り、歯垢染色ジェルやエアスケーラーをつかったバイオフィルムに対するアセスメント、MIペーストを使ったう蝕への対応等について説明した。また、後半ではコンポジットレジンの特性を示しつつ、直接修復と間接修復の適応症、実践的なシェード選択についても実際の症例を供覧しながら解説された。

 土屋賢司先生は、歯周組織を考慮した修復方法について、いくつかの症例をもとに紹介された。補綴治療に先立ち、歯槽骨頂から適切な距離を保ちながらフィニッシュラインを設定すべきという報告も多く見受けられるが、すでに確立された治療技術をもって歯肉退縮なく、その長期維持を成し遂げるのは予想以上に困難であり、良好な予後のためには、我々が現在持っている審美的な歯肉ラインを構築する方法だけでは十分とは言えないと解説。実際には、歯肉のバイオタイプの状態や修復前の支台歯の状態を診断する必要はもちろん、フィニッシュラインの変更や歯肉縁下からのエマージェンスプロファイルを作るなどの試行錯誤を繰り返すなど、慎重な対応をとられているという臨床の実際をお話しされた。

 FERRARI, Marco先生は、IOSで印象採得する際の限界と併せて解剖学上の交絡因子について説明された。次に、軟組織マネジメントに特に留意して、良好で鮮明なデジタル印象を採得するための方法を示されました。一般的な症例でのデジタル印象の難所を示し、デジタル印象を最大限に活かすためのコツが伝えられた。また、市販されているIOS の概要と、その有効性や予知性についても明示された。最後に、ジーシー イニシャル LiSi プレスやジーシー イニシャルLiSi ブロックの特徴とこれらを用いた症例、臨床試験のデータが示された。また、デジタルデンディストリーにおいても、リーダーは術者であることも指摘され、歯科医師はデジタルデンティストリーの特徴について深い知識を持ち、学習曲線を早めるためのトレーニングを受ける必要があることが強調された。