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SESSION 13

至極の審美修復
~生体調和した審美修復とは~

モデレーター:南 昌宏 先生
TAPIA-GUADIX, Javier 先生・青島 徹児 先生
KÖKEN, Serhat 先生・MAK, Anthony 先生

 このセッションでは、南 昌宏先生をモデレーターに審美修復と生体調和をテーマに、国際的な視点でレクチャーが行われた。

 TAPIA-GUADIX, Javier先生は、天然歯に近似した審美的修復を実現することは日々の臨床における課題であると語り、最小限の調整で最適な結果を得るには、徹底的なシェード分析が必要だと説明。材料とシェードを選択する際、歯の構造と光の相互作用や適切な組織解剖学的原理を理解することが不可欠であると解説。光散乱、乳白色、および蛍光は、歯の年齢と共に選択基準に組み込まれるべきと詳説された。歯科材料で天然歯を模倣するというプロセスの中で、さまざまな照明に対応できる修復物のみが真の成功といえるため、そこでより重要になるのが鏡面反射とし、表面処理との関連を解説された。講演では、そうした知見を取り入れた、カスタムシェードガイドを構築することの重要性が説かれた。

 青島 徹児先生は、臼歯ダイレクトボンディングにおいて、歯冠形態を理解し再現・修復することは必要不可欠であることは周知の事実であり、より良い修復を行うにあたり単層充填・積層充填の選択、ダイレクト・インダイレクトの選択についても重要なファクターとなると解説。そのことから、究極の審美を目指すために必要なのは、構造力学的要素を考慮した窩洞形成を行うために、日本人の歯の解剖学を研究した過去の文献を紐解き、解剖学的見地から日本人臼歯部の傾向を分析することが必要だと述べられた。そのうえで、日頃の臨床、歯の観察や石膏の作製、分析、作図など様々な経験から、独自に導いた臼歯部における法則性が発表された。

 KÖKEN, Serhat先生は、臼歯部の隣接面う蝕は、歯肉縁下に至ることもあり、間接的な修復が必要な場合、印象採得、スキャン、および接着や合着を複雑にする可能性があると解説。歯頸部マージンを歯冠寄りに移動するテクニックであるサービカル・マージン・エレベーション(CMR)は、歯頸部の深いマージンに少量のコンポジットレジンを追加することで、印象採得と合着の手順を容易にするとして、講演では、CMR の進化とその臨床応用手順について説明された。また、ラバーダム防湿の重要性や、テクニックセンシティブでない材料を使うということ、そして、拡大視で施術を行うことなどのポイントが語られた。

 MAK, Anthony先生は、保存修復分野でのデジタル技術の応用は、日常の歯科診療においてスタンダードになりつつあるが、ワークフローにおけるこれら技術の適用は困難であり、時に想定通りにいかないこともると前置きされ、最適で予測可能な結果をもたらすためにどのような治療計画が必要かを概説した。講演では、口腔内スキャナ、CAD/CAMや3Dプリンタをつかった診断用モックアップ・サージカルガイドの作製、LiSi Pressへの応用など、治療の流れにどのようにデジタルワークフローを取り入れていくのかを具体的な臨床例とともに示された。