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SESSION 2

マネぶ!〇〇の再生療法と骨造成

水上 哲也先生・片山 明彦先生
瀧野 裕行 先生・SCULEAN, Anton 先生

 水上哲也先生は、「ここまで進化した歯周組織再生療法」の演題で、長期経過症例などを紐解きながらこれまでのフラップデザインの変遷や、現在行っている再生材料の組み合わせについて考え方を述べられた。GTRを行った長期経過症例を提示し、適切なメインテナンスを行うことで、20年以上再生療法を行った歯を保存できることを話された。

 また、フラップデザインの変遷について、歯周組織再生療法のスタンダードな術式としてPapilla Preservation Techniqueを紹介。その他に一次閉鎖が確実に成功する特徴をもつSimplified Papilla Preservation Flapについても、症例を提示しながら解説された。さらに、マイクロスコープを使用した低侵襲型のフラップデザインであるMinimally Invasive Surgical Technique、Modified Minimally Invasive Surgical Technique、Single Flap Approachなどについても触れ、それぞれの特徴について述べられた。

 そして、再生材料については、自家骨のほか、サイトランスグラニュールを骨補填材として用いた症例を提示され、フラップの剝離を制限した低侵襲型の術式により、良好な骨再生へ導けることを示された。

 片山明彦先生は、「歯周組織再生療法における軟組織の安定は硬組織再生を導く」と題して、軟組織の治癒に焦点をあてた講演を行われた。まず、歯周組織再生療法の成功のためには、患者、硬組織、軟組織、サージカルの4つの視点から治療法を選択していくことが重要であると述べられた。とくに、国内で注目されている再生材料については、FGF-2とサイトランスグラニュールを挙げて、インプラント治療の際に効率よく骨へ置換され、理想的な骨レベルを維持できると解説された。続いて、FGF-2とサイトランスグラニュールを骨欠損症例に応用した歯周組織再生療法を多数示された。

 最後に、歯周組織の再生においては、硬組織だけでなく軟組織の形態、とくに歯肉の厚みと角化歯肉幅を考慮する必要があると強調された。サイトランスグラニュールは、生体親和性がよく、生体為害性がなく、骨への置換作用が早く、骨伝導能を有しており、FGF-2とも親和性がよいと結論づけ、歯周組織再生療法の成功がなければ歯肉の治癒はないと締め括られた。

 瀧野裕行先生は、「審美領域における歯槽堤増大術をともなう歯周再建治療」の演題で、審美領域でインプラントと天然歯が共存できる歯周環境の構築を中心に講演された。垂直性骨欠損の患者に対する術式を動画で示しながら、切開、歯肉剝離からデブライドメント、FGF-2の塗布とサイトランスグラニュールの填入、縫合の流れを解説するとともに、歯周組織再生療法のテクニックのコツを披露された。その他にも、リッジプリザベーション、GBR、抜歯即時埋入などの症例を提示し、サイトランスグラニュールを活用することで、良好な予後が得られると話された。また、抜歯窩の分類法について解説し、軟組織と硬組織の状態をもとに4つのクラス分けを行い、それぞれに解決策を示された。

 まとめとして、歯周組織の長期的な維持、安定のためには、適応症を十分に吟味したうえで、適切な再生材料を選ぶことが大切であり、成長因子と骨補填材、メンブレンを併用することは、歯周組織再生療法や歯槽堤増大術に有効であると述べられた。

 SCULEAN, Anton先生は、「Clinical Concepts for Predictable Periodontal Regeneration」と題して、骨欠損の治療に関するディシジョンツリーを供覧しながら、患者の健康状態の把握、歯周治療、再評価を行ったうえで、再生療法のアプローチを駆使し、欠損を治療していくと治療コンセプトを述べられた。使用する再生材料として、Graft、EMD、メンブレンなどを骨欠損の状態に合わせて組み合わせている。欧州ではGraftとEMD、またはGraftとメンブレンが使用されており、GraftとEMDを混合する際は、血液による汚染に注意すべきとし、血液汚染の状態についてSEM像を用いて解説され、術式とともに手術時の勘どころを提示された。

 根分岐部病変の治療については、組織学的な評価として2度は再生可能であるとエビデンスで実証されているが、3度は実証されておらず、歯周組織再生療法の際は2度までに専念すべきと語られた。骨欠損部については、フラップの形成、肉芽組織の除去、GraftとEMDの併用、メンブレンによる被覆など一連の流れを解説された。また、積極的な治療だけでなく、長期予後のためにはメインテナンスが重要であると強調された。