CASE PRESENTATION

GC友の会会員誌GC CIRCLE 91号より
ユニフィルS/ユニフィルボンドの有用性と臨床例
埼玉県開業 日本大学歯学部補綴学教室クラウンブリッジ学講座非常勤医員
塩野英昭
I.はじめに
 ジーシーから新しいう蝕治療コンセプトに基づくコンポジットレジン充填システムが発表された。充填材「ユニフィルS」と接着剤「ユニフィルボンド」である。私はこのシステムをいち早く臨床に導入して経過観察を行っているが、総合的に見て他のシステムでは得られない多くの長所を日々実感している。今回いくつかの症例を通してこのシステムの有用性を検証してみたい。

II.ユニフィルSの臨床的有用性
 最近のカリオロジーの発展1)は、う蝕をう窩発生までの脱灰と再石灰化のバランスの中で理解し、その治療においては「いかに再石灰化を生じやすい環境に口腔内を維持するか」を最重要点として捉えている。しかし現に生じたう窩を充填せずに放置するわけにはいくまい。この際、直接充填材に求められる条件は何だろうか。歯科材料学の知識は、1. 歯質との強固な接着とその経年的な維持、2. 審美性、3. 充填物表面の滑沢性(プラークの付着が少ない)、4. 自身の摩耗性が少なく対合歯質を摩耗させないこと、5. 重合収縮が小さいこと等を列挙している。現在口腔内の多種多様な部位に発生するう窩に対して最も汎用性が高く、操作性も良好であるのはやはりコンポジットレジンである。だが従来のコンポジットレジンには材料自身に抗う蝕性がなかった。

 抗う蝕性充填材料としては古くはシリケートセメント、最近ではグラスアイオノマーセメント(フジアイオノマータイプII,フジIXGPなど)やレジン強化型グラスアイオノマーセメント(フジIILCなど)があり、その中のフィラーであるフルオロアルミノシリケートガラスのフッ素の効果は世界的に高く評価されている。これらの材料では、ガラス粉末中に含まれるフッ素が徐放されるだけでなく、フッ素含有歯磨材や洗口剤のフッ素成分を一時的に「貯蔵」し、徐々に再放出して継続的に抗う蝕性を発揮することが証明されており、充填物周囲の歯に抗う蝕作用が認められることが示されている2)。しかし残念なことにグラスアイオノマー充填は乳歯には適応できても永久歯、特に咬合力のかかる部位での応用には耐摩耗性や強度の面から第1選択の材料とはならないだろう3)

 このジレンマをみごとに解決したのが「ユニフィルS」である。この製品はレジンマトリックスに微細なフィラーを配合した正真正銘のコンポジットレジンであり、フィラーにグラスアイオノマーに用いられているフルオロアルミノシリケートガラスをそのまま使用している。そのフッ素徐放量は、最近注目のコンポマー系材料と同等以上であることが論文で示されている4)。耐摩耗性はコンポマーやレジン強化型グラスアイオノマーより格段に優れており、そのうえ簡単な研磨によって表面の滑沢性が得られ、臨床上非常に重要である操作性も大変良好である。以上数々の理由で、私は永久歯のほとんどの部位のう窩直接充填処置材料として、現在はユニフィルSを第1選択としている。

III.ユニフィルボンドの臨床的有用性
 ボンディング剤には、簡便性、接着安定性、耐久性とテクニックエラーを最小限にできるシステムが求められている。リン酸エッチングから始まる3ステップに慣れていた当時、セルフエッチングプライマーによる2ステップのユニフィルボンドシステムの簡便性が術者、患者双方にもたらすメリットは衝撃的であった。とくにリン酸自身の持つ刺激性と水洗時に感ずる味の悪さ、知覚過敏の充填時の冷水痛を回避できるようになったのはありがたい。もう時代を後戻りすることはできない。


IV.う窩処置および知覚過敏処置にユニフィルSを用いた臨床

症例 
写真をクリックすると、それぞれの症例が表示されます。

症例1
上顎犬歯歯頚部の知覚過敏を伴う実質欠損の修復例(28歳男性)
症例2
上顎犬歯小臼歯歯頚部の知覚過敏を伴う実質欠損の修復例(50歳女性)
症例3
上顎小臼歯歯頚部の大きな実質欠損の修復例(38歳女性)
症例4
上顎犬歯歯頚部および小臼歯頬側のう蝕の充填処置例(45歳男性)
症例5
上顎前歯正中部のう窩の充填処置例(22歳男性)
症例6
上顎前歯隣接面のう窩の充填処置例(20歳男性)


V. う窩処置以外のユニフィルS充填の臨床

V-1 前歯歯間離開の修復
 この修復法が当初発表された時代には材料の制限からあくまで歯冠補綴ができない場合の暫間修復としての位置付けであったが5)、接着剤と充填材料の進歩が、このまったく外科的侵襲のない治療法の価値と寿命を飛躍的に伸ばしている。もっとも修復部位の十分なプラークコントロールは経年変化の抑制には必須ではある。

 この場合ユニフィルボンドによる歯面処理に先だってリン酸エッチングを行い、積極的にエナメル質にタグを形成する必要があるだろう。こういった充填にはユニフィルSの透過性を抑えたオリジナルシェードであるAO3が最適であり、誰でも簡便に最大限の効果が得られる。


写真をクリックすると、それぞれの症例が表示されます。
症例7
下顎前歯部の歯間離開に対する充填処置例(22歳女性)
症例8
上顎前歯正中離開に対する充填処置例(24歳女性)
参考症例
正中離開の充填処置の長期経過例

V-2 咬耗犬歯尖頭の修復
  Lee6)、佐藤友彦7)は、異常な咬耗によってすり減った犬歯尖頭を直接充填材料で修復することで咀嚼サイクルの狭小化をはかり、臼歯咬耗の進行の停止、ブラキシズムの抑制および審美性の回復を行う臨床を提唱している。この場合もユニフィルSのようなフィラーの細かい、対合歯を摩耗させる可能性の少ないコンポジットレジンが材料として最適であろう。

症例
写真をクリックすると、症例が表示されます。
症例9
上顎犬歯尖頭の充填例
(26歳男性)


VI. まとめ

 以上、ユニフィルSとユニフィルボンドを用いた臨床例を紹介してきたが、抗う蝕性を持ったコンポジットレジンにはまだまだ色々な応用法がありそうだ。日本でのその分野の嚆矢としてユニフィルSシステムには、大変注目している。

 世に数多くの充填システムが氾濫しているが、“コンポジットレジン”はどれを選んでも得られる臨床結果は同じ、ではない。

●文献
1)飯島洋一,熊谷 崇:カリエスコントロール 脱灰と再石灰化のメカニズム.医歯薬出版.東京,1999.
2)Donly,K.J.,Segra,A.,et al:Evaluating the effects of fluoridereleasing dental materials on adjacent interproximal caries. JADA,130:817〜825,1999.
3)CRA現状報告 ダイレクト・レジン修復物−最前線:CRA ニュースレター日本語版3巻3号,1999.6月.
4)鳥井康弘,糸田俊之:修復材料からのフッ素徐放と臨床的意義.歯界展望,93(4),795〜801,1999.
5)芳賀通夫訳:エステティックデンティストリー 審美歯科の臨床.医歯薬出版.東京,141〜155,1985.
6)丸山剛郎監訳:ファンダメンタルズオブエステティック.クインテッセンス出版.東京,137〜201,1994.
7)佐藤友彦:審美−金属色のない歯冠修復−.日本大学歯学部同窓会雑誌,41(5別冊):25〜34,1997.


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