Withコロナ時代に新たな気づきや生活・行動の変化がおこり健康の大切さを意識するようになりました。
本コンテンツは、「 チョット役立つお口の情報 」をコンセプトにエッセイを中心にご紹介いたします。

ess01コロナと滑舌

昭和大学歯学部高齢者歯科学講座教授

佐藤 裕二

コロナの蔓延により,人と接する機会が減り,会話することも減った。そのため,人によっては,丸一日一言もしゃべらないこともあろう。さらに,会話の際にも小さな声が推奨されている。そのため,お口の機能の一つである滑舌(発音や発声がはっきりとしていて滑らかなこと)が低下してきているように感じる。

口腔機能の軽微な低下や食の偏りなどを含み、身体の衰え(フレイル)の一つである「オーラルフレイル」を診療室で評価するために, 2018年から医療保険に検査と管理が導入された。その検査としては,滑舌,口の汚れ,口腔乾燥,咬む力,かみ砕く能力,舌の力,飲み込む能力などが含まれている。滑舌の検査としては,「パパパ」「タタタ」「カカカ」の3種類を5秒間に何回発声できるかを測定する。30回未満であれば滑舌が低下していると診断される。

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当院で,コロナ蔓延前(2020年4月以前)に200名,コロナ蔓延後(2020年6月以降)に57名の患者さんの口腔機能の検査を行ってきた。その結果,前後で,患者さんの年齢はほぼ同じであるにもかかわらず,滑舌が低下している方は66%から79%に増加してきた。

これは困ったことであるので,滑舌が低下している患者さんには,「パタカラ」という言葉を,なるべくはっきりと早くしゃべるトレーニングを1日に1回で良いから行うように指導している。半年後の再検査では,その効果が現れているようである。

自分で簡単に検査する方法を紹介する。指折りながら,「パタカ」を10回発音して,その時間を時計の秒針やスマホのストップウォッチで計る方法である。5秒以上かかった場合は,滑舌が低下している可能性がある。口腔機能低下症の検査を行っている歯科医院を受診すると良いであろう。一部の歯科医院では,検査結果から「お口年齢」を計算してくれるところもある。

日常生活が取り戻せて,大きな声で歓談できる日まで,滑舌をはじめとしたお口の機能を保っておきたいものである。

hito-pic 佐藤 裕二 先生

profile

1982年
広島大学歯学部卒業
1986年
広島大学大学院(歯科補綴学1)修了・歯学博士
1986年
歯学部附属病院助手
1988年~1989年
アメリカ合衆国NIST客員研究員
1990年
広島大学歯学部講師(歯科補綴学第一講座)
1994年
広島大学歯学部助教授
2002年
昭和大学歯学部教授(高齢者歯科学)
2019年
日本老年歯科医学会理事長(2年間)

専門医・指導医:補綴歯科学会,老年歯科医医学会,口腔インプラント学会,顎関節学会  著書:義歯,口腔機能低下症,撤去,節約,高齢者歯科など多数