


「痛ったたた・・・」車の運転席から、後部座席に置いた重たい鞄を持ちあげた時である。今までにない肩の痛みを覚えた。高校時代、体操競技に燃え、鞍馬のシャギニアン、鉄棒では大車輪からのヘヒト、吊輪でのひねり下り、床では連続宙返りなど当時では高校生としてはC難度の技をこなしてきた自分である。五十肩の言葉は自分には有りえないと思っていた。
五十肩は、近年発症の低年齢化が進んできた為に、若い人の場合には四十肩という名前が出来たという。逆に昔は六十肩ともいったという。その一方で、腕を上げられる限界の角度(四十肩の方が比較的上まであがる)により、四十肩、五十肩と分けて言うこともあるという。整形外科医の兄に「五十肩の正式病名は何?」と聞くと「五十肩・・・」とそっけなく答えた。「それは臨床名じゃないの?」という私に、「日本整形外科学会用語集や、整形外科の教科書にも載っている正式病名だ。強いて言えば一般的にいわゆる肩関節周囲炎だろうな?」と曖昧な兄。「それじゃ治療法は?」と聞くと、「自然になおる・・・。1年以上かかるけど・・・。または、年に応じた運動療法だね」。さらに私が「それじゃ痛みがひどい場合はどうするの」と聞くと、「我慢する、手を高く上げない、痛み止めを飲む・・・かな」と。「そんないい加減なの?じゃあ治癒の判定はどうするの?」と聞くと「痛くなく、万歳ができたら治癒・・・」だそうな。顎関節症もビックリの実にいい加減な病気・診断・治療である。結論として、五十肩の病態は、肩の関節疾患(疾患も炎症も実にいい加減な名称でとりあえず患者に説明する便利用語のようである)で、年齢により四十肩、五十肩といい、症状はほぼ一緒、治療法、予防法も同じということらしい。しかし、年齢が上のヒトの場合は、体への負担を考えて、あまり無理をする活動をしないが、四十肩になると、より短期間で痛みを防ぐための運動が必要になる。
さて、鞍馬のシャギニアン下りとは、馬端下向き転向連続馬端転向下向き下りといい、分かりやすく言えば、鞍馬の端っこで、クルクル回って着地を決めることである。鉄棒の大車輪からのヘヒト下りは、高さ2.55メートル、幅2.4メートルの鉄棒をグルグル大車輪で周り最後に鉄棒を飛び越して着地する。吊輪のひねり下りは、着地の時にひねりを加える、高校生にはなかなか難しいものである。床の連続宙返りは宙返りを3回連続するというものである。
五十肩になった私の夢は、60歳で鉄棒の大車輪である。鉄棒を握り万歳の状態になる大車輪ができるか、そして、夢が叶うか、または落下して大けがをするか、はたまた新しい治療法の開発になるか、夢は膨らむばかりである。ちなみに女房は、「バカなことを考えるのはやめなさいよ。恥ずかしくてお見舞いにいけないよ・・・」と失敗することを疑っていない。
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