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若林 健史
Vol.195

巌流島の戦い〜天然歯 VS インプラント

(2011.11.22)
東京都渋谷区・若林歯科医院
若林 健史 著者紹介


第54回日本歯周病学会秋季学術大会山口県下関市開催

 第54回日本歯周病学会秋季学術大会が平成23年9月24日(土)に山口県下関市にある海峡メッセ下関で広島大学大学院医歯薬総合研究科歯周病態学分野栗原英見大会長のもとで開催された。大会のメインテーマが「連携医療における歯周病治療」ということもあって、特別講演やシンポジウムは医療連携、ペリオドンタルメディシンの現場の声が多く登場し、取り組みが奏効している部分と問題点が浮き彫りにされた。それぞれの取り組みは政治が介在しなければならない部分も多く、これから長期にわたる試行錯誤が続くものと思われるが、歯周病学会として現場の声を各方面に広く発信していく機会は増えると思われた。

 この大会を通して感じられたことは、ここ数年、テーマとしてインプラント関連の話題が取り上げられることが多かったように思われるが、今大会ではインプラントの話題が少なくなっていたということである。唯一、日本口腔検査学会との共同企画シンポジウム「歯周治療における口腔検査の展望」というセッションのなかで東京歯科大学教授の井上孝先生による「歯周組織とインプラント周囲組織の検査」という講演が行われた。

 米国歯周病学会でも依然としてインプラントを用いた歯周治療が取り上げられているが、最近、天然歯保存への再帰傾向が見られるような気がするのは筆者だけであろうか。1970年代までは切除療法や歯肉歯槽粘膜形成外科(MGS)が歯周治療の主流であり、1980年代に入ると細胞遮断膜を用いた歯周組織誘導再生療法(GTR法)が考案された。そして1990年代後半には、生物学的再生療法としてのEMD (Enamel Matrix Derivative)を用いた再生性療法が開始され、また現在2000年代ではBMPやPDGF等の成長因子を歯周組織再生に応用する試みがなされており、種々のサイトカインが含まれたPRP (Platelet Rich Plasma,多血小板血漿)が実際に臨床の場で使用されている。


「巌流島の戦い」
宮本武蔵 VS 佐々木小次郎像

 ここ数年天然歯が不必要に抜歯されてインプラントに置き換えられという悲しい時期が続いている。あたかも巌流島で宮本武蔵と佐々木小次郎が決闘をした「巌流島の戦い」の様相を呈している。巌流島は今回の第54回日本歯周病学会秋季学術大会が行なわれた山口県下関市彦島江の浦東岸250mにあり観光名所になっている。筆者は学会の前日にこの巌流島に渡り、決闘の場所を見学して来た。両者がじっと見つめ合った長い間合いから、勝負に出た瞬間の像がそこには造られていたが何となく天然歯とインプラントの一騎打ちの様にも見えた。


巌流島

 当時、諸国をまわったのち小倉の細川家に仕え、小倉城下に道場を開いていた佐々木小次郎に、諸国修行中の武芸者宮本武蔵が、細川家の家来であった長岡佐渡を通じて試合を申し込み、慶長17年(1612年)4月13日に巌流島で試合をした。結果は約束の時間に遅れて島に着いた武蔵が、船の櫓をけずって作った長い木剣で小次郎を倒したとされている。筆者は決闘などせずにそれぞれの剣道を極めれば良かったのにと思った。天然歯もインプラントもどちらにも利点・欠点があるのだからそれをうまく融合させて平和的な共存が出来るようにして欲しいと時空を超えて宮本武蔵と佐々木小次郎が語りかけて来たように思えた。