


The World Opinion Leader Meetingによる自律神経失調症

はじめてのヨーロッパ国際講演の機会が訪れたのは、海外研修をスタートして5年後のことである。総義歯の新しい人工歯を使ったケースプレゼンテーションを約30カ国の歯科医師の前で話さなければならない。大きな喜びとプレッシャーが全身を駆け巡った瞬間であり、下顎総義歯の吸着の世界お披露目のビッグチャンスでもある。プレゼンは得意だが世界の人がどんな話をするのだろうと興味津々。しかし、そんなことを言っている場合ではなかった。考えてみれば私の英語は留学経験もなく、近所の英会話学校で勉強しただけなのに、日本人は私1人なのだ。誰も助けてはくれない孤独な状況である。
前日、案の定、空港に迎えにきたのは外国人、夕食会も外国人だらけ。お願いだから、きれいな英語でゆっくり話して!ドイツなまりの英語はやめて!フランス語、イタリア語なんて全然分からない!でも不思議、言っていることが次第に聞こえてくるようになった。会話の途中で、「英語は下手かもしれないけど、日本語は君達よりずっと上手いのだぞ」って言ってやりたかったのに。
講演当日、身体に変調が現れた。やたらトイレに行きたくなるのだ。膀胱炎か?利尿症か?いや、おかしい。前も後ろも調子が悪い。自分の講演時間が近づくにつれて少しずつひどくなる。漏れたらどうしようという不安と出るものはもう何もないという事実とが頭の中で交差していた。
本番スタート、始まってしまうと不思議と落ち着いて話せてしまった。終わった途端、変調は回復した。
あれは一体何だったのだろうと思い帰路についたが、帰りのチューリッヒ空港へ向かうタクシーでまた同じ変調を来たし、ドライバーさんにパーキングで止まってもらって用をたした。帰国後も車に乗るとトイレに行けないという不安が先立ち、高速道路から降りたくなることが何度も起きた。
「これは、どう考えても不安から生じた自律神経失調症だよね。」と家内に言ったら、「最初から自律神経失調症だと思っていたわ」と素っ気なくいわれ、さらに落ち込んだ。
「もっと楽な人生はないのかなー」と大仕事をした自分を誉めながら身体の弱さを恨んだ国際発表であった。
ちなみに、講演でレベルが高かったのは、日本、アメリカ、スイス、ドイツである。
次はそこでできた世界の友達について話をする。
総義歯臨床家:阿部二郎
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