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  • Vol.223 2011.12.14
  • 子どもたちの将来は私たちの「希望」そのもの

  10日の皆既月食、ご覧になりましたか? 満月の美しい月が左から右に欠けてゆき、ふたたび蘇る、壮大な天体のショー。地球の影に隠れている間は赤銅食に見えました。
  これは地球の大気がプリズムになって赤色だけ月に届くからですが、二千年前のギリシア神話の語り部が見ていたら、月の女神アルテミスの痛快な冒険物語が生まれていたかもしれませんね。

  皆既月食で月がすべて隠れたとき、同じギリシア神話の「パンドラの箱」の物語を思い出しました。
  人類最初の女性パンドラ(「すべての贈り物」という意味)が、夫に「決して開けてはいけない」と言われていた箱を好奇心から開けてしまい、世界に「悲嘆」や「疫病」などの災厄が満ちあふれた。最後に残ったのが「希望」だった、というあの有名なお話です。

  今年の5月、建築家の安藤忠雄さんらが、東日本大震災で肉親を失った遺児の学びを支援しようと、「桃・柿育英会」を創設しました。一般から資金を募り、震災遺児を経済支援する仕組みで、「桃栗三年柿八年」にちなみ、遺児の成長を末永く見守っていこうという決意を込めたそうです。

  年明けには、東日本大震災で肉親を失った震災遺児のグリーフケアが始まります。グリーフケアというのは、大事な人を亡くした人が喪失感を受け入れ、悲しみに適応する過程を専門家が支援する取り組み。
  心的外傷後ストレス障害(PTSD)などへの医療的ケアと合わせて、厚生労働省が岩手、宮城、福島の3県と協力して、専門のスタッフが一対一で子どもの話を聞き取り、会話やスキンシップを通じて悲しみの軽減を目指します。

  月食で月が消えても、やがて光が満ちて来て、満月の純白に変わっていきます。
  肉親を亡くした子どもたちがそう感じられるよう、草の根単位でどう支援していくか。これは「2011年」という年が私たちに与えた課題のひとつなのだと思います。

コラムニスト 鈴木 百合子