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  • Vol.219 2011.10.13
  • 古代オリンピックを思うスポーツの秋

古代オリンピックを思うスポーツの秋

  地下鉄の地上出口に着いた時、キンモクセイの香りが微かにまじる風にハッとしました。近くのマンションの軒先に小さな庭木がけなげにオレンジ色の花をつけているのを見つけました。見上げる秋の空はどこまでも澄んで、高く感じられます。

  この時期はスポーツの秋。そういえば、オリンピックは夏場に開催するのに、東京オリンピックは10月10日でした。変則的ですが、海外から来た人たちに心地よい日本の秋を楽しんでもらうのも、当時の主催者の「おもてなし」のひとつだったのかもしれませんね。

  古代オリンピックは紀元前776年に、古代ギリシアの全能の神ゼウスに捧げる祭典競技として始まりました。参加資格はギリシア市民の男子。当時のギリシアでは4大祭典競技として知られ、オリンピア地方の他にもコリント地方、ネメア地方、デルフォイ地方などで行われていました。

  当時の古代ギリシアは群雄割拠の戦乱の時代。開催中は協議会成功と参拝者の安全を守るためにオリンピア祭に出場するすべての都市国家と植民地に休戦を呼びかけので、戦争中でも一時停戦してオリンピックに駆けつけたとか。これが、実質的な「平和の祭典」になりました。

  競技種目は初めの頃は短距離走だけだったようですが、その後、徒競走、レスリング、ボクシング、五種競技(スタジオン走、レスリング、走り幅跳び、円盤投げ、槍投げの総合点で競う)、競馬と戦車競争なども加わり、闘いの時のように兜とすね当てを身につけ楯を持って徒競走をする「武装競争」という競技もありました。

  特にレスリングは気品とスタイルが重視される紳士のスポーツで、都市国家アテナイ最後の王コモドロスの血を引く貴族の息子だった哲学者プラトンさえ、選手として活躍していたとか。頭でっかちでひ弱な男性のイメージでしたが、実は体育会系男子だったのですね。

  1,100年あまり続いたオリンピア祭も、ギリシアが紀元前146年にローマ帝国に支配されて変容し、390年にキリスト教がローマ帝国の国教と定められたことでとうとう断絶してしまいます。
  現代のオリンピックとは似て非なる競技大会だったようですが、肉体の限界に挑むアスリートの強さ、美しさは時代を超えたもの。

  朝からパワートレーニングに励んでいるアメリカのエリートビジネスマンをはじめ、現代の私たちにとっても健やかな身体に明晰な頭脳というのは永遠の憧れです。

コラムニスト 鈴木 百合子